この物語はまだ散弾銃時代にさかのぼる

 

冒頭少しご説明を申し上げる ライフル銃と言うのは国家試験である狩猟免許を取

り散弾銃の所持許可証を受け実際に狩猟登録と言って狩猟時期に1県に対し38000

円などの狩猟税を払いその実績を10年積むとライフル銃の所持許可申請の資格が与

えられる 資格があっても申請して許可がもらえるかどうかは公安当局の判断にな

る厳格なものです ライフル銃はすでに完成されていて改良の余地はないらしい

100mの集弾性能は標準的な弾で500円玉に3発撃って3発入るくらいです はずれ

るのは銃の保持のずれと引き金が落ちる時のずれです なるべく重い銃で三脚を使い

伏せた姿勢で安定させ 引き金を絞っていきいつ落ちたのか判らないくらいが遠く

 

の標的には有効らしい イラク戦争でアメリカ兵が3km近く先のイラク兵士に着弾

させた公式記録があるみたいで 弾は音速を超えるので無音で標的に当たってから

何秒か後に音が来る感じです 狙撃が出来るので許可も厳格にならざるを得ません

今回の話はまだ私がクマ猟駆け出しの頃に戻ります ある年の猟期に散弾銃を手に

クマの足跡を辿っていた それは出尾根の八合目、俗に高速道路と言われ野生動物

の誰でもが長い距離を移動する時に使う楽な道でありみんなが通っているのでしっ

かり踏み固められたはっきりとした道である 足跡は比較的新しく初心者にも解る

 

くらいだから夕べか今朝だとふんでいた でもクマは餌場と寝床は時に遠く離れて

いる時もあり気まぐれそのものである それにしても今日はもうずいぶん歩いてい

るクマの足後はひずめ系の動物と違って硬く踏み固められた道では全く後を付けな

いのでいつ左右にそれてしまうか解らずキョロキョロしながら通り過ぎてはいけな

いとの気持ちから歩くスピードが落ちてしまうのはしかたない 山が窪んで沢筋に

なると多少湿り気がありそうな そうゆう所でかすかな爪後と肉球後を探すのだが

ここで見つからないと逆戻りしてそれた所を探さねばならないか またひとこぶ先

に進んで足跡があるのを期待するかの判断をするはめになる 山全体を見て岩場と

 

待避所(杉 ヒノキの植樹林)の関係やエサ場とそれらの関係なども考慮に入れるの

だが 私の気配を気付かれてはそれはもう、ぐるっと大山を回って現在地まで戻

ってきたりされてしまうその辺の判断も極むずかしい クマが獲りたくて独学で猟

を始めても足跡が見つけずらい事や1日の歩く距離が長い事とか岩場が好きで歩く

だけでも危険な事 元より猛獣で怒らすと危険な事など危険が幾重にも重なるので

よほど根性がないとクマの習性すら勉強できずに諦めてしまうだろう まして今時

では生活のためにクマを獲る訳ではないのでクマを獲ろうとして山へ入りクマを獲

ってくる者は皆無と言ってよいくらいである さて話はそれたがこのクマまだ足跡

 

はつづいており目の前には植林して20年生くらいのヒノキ林となっている 中に

入ると昼間でも相当暗い ヒノキの葉は細かく密集するので光が入りづらく下草も

生えずらい殺菌作用もあるのでキノコも生えないくらいだ見づらくはあるが猟中頭

を上げたときには見える限り遠くに目をやる中間地点は獣としては逃げるに値する

距離なので必ず動くし動けば見えるから最初から遠くを見るのだそんな中目前に

に切り立った岩場が見える クマと岩は切れない関係で岩の周りで仮寝をしたり

フンをして縄張り市長したり犬に追われると犬の来れない岩場に逃げ込んだりも

するし目印にも使っている様でありこんな暗い中に岩場となるともうひっそりと音

 

も立てずなめくじの様に近づかねばならない 岩場までの距離をつめるにしたがっ

てその向こうにも炭焼き釜があるのが判った炭焼きは山の右と左 上と切った木を

集めやすい場所に設置するので獣が移動するにもどっちへでも行ける行きやすい

場所と言う事なのだが 逆に冬中の安眠となると通り道に近いのは邪魔がはいるの

ではないかと思うが・・など考えながら近づくと岩場の立ち木に爪跡があるその木

の下には木の葉ななくきれいに土が出ていて・・もっと近づいてみる おっと引っ

込んで見えなかったが穴らしき形となっている覗きこむと確かに岩穴だ ここには

入っているぞ!と直感した瞬間 どこどこどこ・・音がした! 静粛の中大きく聞

こえたその音はまさか穴の中のクマが伏せながら歩った音?今までそんな大きな足

 

音を聞いた事はなかったし どうすればそんな大きな音が出るのかと思いながら私

の体は後ずさりし目と銃は穴の口を狙っていた この穴は難しい 穴の前は40cm

ほどしかなく崖になっており一段下から生えている木に縄張り主張の爪跡があるの

だ 言い忘れていたがまだクマ猟初心者時代にはライフル銃は持てず散弾銃にバラ

ラ弾ではなくロケット弾と言い大きな塊の1個弾が入れてあるのだが長い銃を目に

当てて構える体制が取れない いつ飛び出てくるか判らない緊迫した状況である

まっすぐ前は崖なので出てきたとするといったん止まり敵が右に居るのか左なのか

見渡すに違いないとにらみながらも銃を構えるがいっこうに出てこない音もしない

さてどうしたものか岩穴の作りを良く観察すると上部に切り欠きがありそここ視線

 

を持っていければ少しではあるが穴の中が見えるのでそこまで出てきた所で発射

しょうと銃は構えつつ穴の上部の方へ左足を運ぶ右足は爪跡のある立ち木へかけ

穴前の道をまたぐ格好で銃を構えた さてあとはクマが出てきてくれれば穴を出る

前に発射出来る次射もクマが左右確認している間に発射出来ると言う作戦である

が、クマが出てこないかなり待ったが出てこないあなたが居れば突撃命令を出すん

だが今日のところは単独猟弾は腰に巻いた弾帯に20発そのうち5発は中型獣用の

9玉同時発射の弾 非力な人間用には即死確実で最適だが大物猟には余計元気にさ

せるだけの弾である クマを目の前にみすみす帰る訳にはいかずこの弾を使って

 

おどしをかける事にした 見える穴内に2発発射する だーん! だーん! 

散弾銃だとこのくらいの音である 当然口径は大きいものの回転もなくめりこむ

だけなのでパンチ力も少ない 近距離ならロケット弾の方が利き目があると言うの

はウソです 破壊力は回転とスピードだからですこの続けざまの2発は効き目が

あったようだ 最初に何かを感じて穴の中で走ったのでその後外が騒がしい中強烈

な音と9個の鉛の弾のはじける音と振動 クマはあわてました またあの走る音

が・・音が異常なのでもしかしたら穴は岩に見えるけど通路は土でそこへ草木の

細根などが生え乾燥するとあんな音も出るかもしれない 銃内の弾数はあと1発

 

しかし中で走っている どうする・・・ ふっと黒い物がそしてすぐ引っ込んだ

ほんの一瞬でした引っ込んだのなら 今だ銃は片手で構えたまま右手で腰の弾帯か

ら2発ロケット弾を引き抜き カシャカシャ装填完了!普段から家でTVを見ていて

も銃を見ずに感覚だけで装填の訓練などあたり前に怠らない 命がかかる猟は出か

ける前日だって銃の掃除や点検など当たり前にやらないとならない航空機の整備

 点検と同じ様にだ 檻もなくこんな暗い山の中でクマと対峙した緊迫した状況

では正常時とは異なり恐怖でミスも起きようというものだいかに日頃の訓練が大切

かはこの心臓の高鳴りを感じれば身に染みる しかし私はこの心臓の動きが好きで

 

たまらないのです今日でクマを見るのは3回目 クマに向かって銃を構えるのは

2回目 前回は発射はしたものの平気な顔で走って行ってしまいました 始めて見

たのは尾根筋を帰りぎわ私の気配に気が付きそこで仮寝をしていたんでしょう飛び

起き走り去りました しかしある程度走ったら止まって降り向きました これを

見逃してはいけません これがクマの習性なのです腕力に自信があるのかも知れま

せん シシやシカはこれをやりませんからね逃げるときはいちもくさです 余談で

すがカモシカは天然記念物でおおかた人からは狙われませんので止まってこっちを

見ていたりするのです さて鼓動が早鐘の様で心では来い来いと叫んでます また

音がします どこどこどこ・・ちょっと見えたので頭を狙い引き金を引いた

 

そのとたんさがられた こんな事が3回もありウソの様な話です 確かにクマは

ビギナーで心臓も早い体制も苦しい しかし3回も当たらないとは。 銃には弾は

入っていません 今出られたらと頭を恐怖が襲いました 銃でなぐるしかないで

しょう そんなんで無事でいられるとは思いません すかさず弾帯から1発引き抜

き カシャ 2発3発目が入れられません 恐怖とはそうゆう物です 出て来まし

た 頭です だーん! 頭に当たれば散弾銃といえども頭蓋骨を破壊し中身も動き

を止めるでしょう クマはまた引っ込みました 当たっていないと言う事です

なんだよと思いながらも仕方ない弾帯からロケット弾を1発装填狙いを付けますが

来ません もうすでにクマは行き来を5回やってます 外には出て来ません向こう

 

も相当怖いのでしょう とにかく行き来が出来るのは生きているのですから何度で

も威嚇のつもりでやっているのだと思われます 間が空いたのであと2発引き抜き

装填 これで銃には3発入りました 小安心と言った所です 姿勢もまたを開き岩

と立ち木でつっぱっているので安定もしません 筋肉がいつまで持つか 心臓も早

い 見ずらい 怖い クマがほしい なんだかうれしい 入り混じった感情でとて

も平常心とはいきませんでした が来ました! だーん! 今度は頭ではありませ

ん あいつ加減を間違えもう少し前にまで出てしまったのです 当たったのは首で

したパタリと倒れ動きませんクマに転向してからシカやシシと遭遇しても撃ちませ

ん それでなくても少しの気配で早立ちしてしまい足跡もなかなか追えないから

結局いつまでたってもクマ猟師にはなれそうにないからですこの日 クマと対峙し

 

た嬉しさと仕留めるのに時間がかかったのを忘れ気が付いたらもうすぐ夕方です

 

山の夕暮れは早いくすぐに暗くなってしまいます 30分くらい観察してから

おんぶをして山を下りる事にしました クマは山では解体しません捨てる所がない

のです それに形的におんぶが出来るので一人でも持ち帰るのがわりと簡単です

けど重さ的には休み休みでも 捻挫などしない様にしなくてはいけません 1年に

1匹だけのクマが獲れたらそれだけで大喜び 後は帰るのが朝になったってどーっ

て事ないのです ルンルン。