クマの攻撃からのつづき
クマは猟師の足を払いにきたがクマにとって岩場に穴があればもって こいの場所 猟師は気を付けて歩いていたところへの足払いであった のでバランスを崩しながらかわし穴の向こう側へ遠のき相棒に声を かけた すぐ上の岩段を平行して散策しているのである 相方 「いたぞ!」 「おし 今行く それでどうした」 相方 「戻った」 短い会話でもう必要ない クマ撃ちは1人か2人、大勢で山を囲みわい わいやる巻き猟ではおもしろくないし 第一分け前が減ると言うもの だ 巻き猟は逃げるしか脳のないシカ シシが猛スピードで駆け 抜けるのに射かける醍醐味 クマ殺しなども犬などしかけてみても 到底かなう訳もなく木に登らせる芸で撃ち獲ったとしもすぐ飽きるし 後に殺生の悩みを残す気がしてならない 私達はいつでも殺生する時
は対決していただくと決めていた 猟期が始まり初雪が降るまでは まだ葉が多くて獲物が出てもまだ良く見えないが撃ち手に姿を2秒 見せたらなんとかライフルスコープのクロスにとらえる事が出来るかも 知れない それで撃てたらこっちの半分勝ち 逃げるクマを探し出して 獲物を回収して始めて私の勝利となる 1秒しか姿を見せなかったり 血を滴らせながらも探す事が出来なかったら技を使ったクマの勝ちと なる 雪の積もる頃から穴撃ちとなるがこれは穴をいくつ知っているか
や今年はどの穴へ入るかなど 運がかかわってくるが猟気前から山全体 を歩きエサを獲った所や休んだ岩場 フンの場所や量などクマの気配を 調べておき 穴には近づかない様にしておき初雪の時期に今回のように ひっそりと猟行するのであるまさか穴から手だけを出し人の足を刈り払 い取って返し夢だったかの様な早寝とは想像も出来ぬ奇行に出たものだ しかしクマの手は力があるだけに肩からひじ ひじから手先までは短い 結果的に人の足まで届かなくて良かった 爪に防寒長靴や狩猟ズボンなど
引っかかろうものなら丈夫に出来てるだけに引き込まれて恐ろしい事態 になった事だろう ふたりは穴をはさんで銃を身構える 穴は前の岩段に 対して直角ではなく少し相方の方へ鈍角になっていたのだ 私は逃げよう とすっとび出るクマへ間違えなく狙いを定めるべく集中し 見やすい相方 はフラッシュライトを点灯し見えたらすぐ発射出来るようにそろそろ身を 乗り出す 通常寝ている時の姿勢は内臓をかばっているので急所は脊髄で あるがフラッシュライトの明かりをもってしても丸くなっているだけで
脊髄がどこなのかは分からず判断に時間がかかったと後に言っていた どっしーーーーん!! 静粛を打ち破る物凄いライフル音が鳴り響いた 発射した瞬間 相方は私の次射に備えて相当後ずさった 後はまかせたぞ といったかの様に、いや実は前々からの打ち合わせどうりでよろよろと穴 から出てくるクマはまずいない 飛び出てくる半矢のクマへの次射はそれ こそ難しく絶対はずせないし相方又は自分に飛び掛る前にもう一発着弾 させねばならないのだ 飛び出たと言う事は急所をそれていてもうすでに アドレナリン大量放出中なので手ごわい 息を飲む緊張の極みの時である
短い様で長く感じるこの感覚こそがなんとも言えず 私の心の奥に普段理性 が押さえ込んでいるものを一気に吹き飛ばし全力凶暴人なる私がまばたきも せず一点を見据えている 我ながら命がかかるとすごい集中力である そしてどのくらい経っただろうその長い極みの時が過ぎやけに静かな何の音も 気配もない静粛そのものであるのに気づく 着弾しているなら時間が彼を殺し てくれる どうせ覗いてもホコリが舞い立ち何も見えないのだ ここは離れて 穴の上に登り腰でも下ろして一服するが得策であろう 穴撃ち猟に限らず 着弾したらしばらく離れて視野内に置き良く観察するのが常である 手足の
どれかが地面を向いていないか 耳や唇や鼻が動かないか胸のあたりは動い ていないかなど詳細に観察し30分も経ち血が出て広がって来ているのが 解れば判断は簡単であるのだがそううまい場所に倒れてはくれない さて 穴の中のクマだがあれだけの大きな音をさせてもピクリとも動かず寝ている 相方の事だ距離1.5mの的をはずす訳もなく体格の小さい私が中へ入る事に なった中は狭く両手を突いて匍匐前進すら出来ない ひざを>前へ繰り出す 事も出来ないので私は体を硬くし外から相方が私の>足を蹴飛ばす事になった 地面に寝て手を伸ばしておきクマのどこでも掴めればそのまま 相方が私の足
を持って引き出す計画だ さんざ騒いでまだ生きてるとも思えないが恐る恐る 触ると手らしき形があったので生温かい手をギュとつかみ合図をした 相方は 力いっぱい引っぱるがクマと私とその摩擦で少しも引き出されない そんな事 もあろうかと穴に入る前に肩にザイルの補助ロープを引っ掛けておいたのが役 にたつ クマの手が伸びたところを手探りで手首に補助ロープを縛りつけ 最初は交互に引っ張ってもらい道筋が付いた所で私が抜け出たい なにせ 獣臭がひどく湿度があるのは出血のせいだろうか真っ暗で生きたここちがしな いのです クマ穴にいらずんばクマを得ずですが出来るだけ短く済ましたい
穴の途中は狭いが奥は少し広くなっておりクマにとっては正にいい穴らし い 人が見ていい穴とクマが寝るに良い穴は違うらしい見栄えダサくても良い 穴ならば血の匂いの消える4年くらい経過すればまた縄張りを勝ち取ったクマ が入る可能性が高い 良い穴をひとつ見つけると100万円と言われるのは何度も 撮れるからである シカやシシと違ってクマの胆嚢は高値が付くので 昔から 金と同じ値段と言われたが今は絶対量が少なく金よりはるかに高いらしく中国 では飼いクマを手術までして胆汁を取り出す映像がニュースで流れ不評をかっ ていたくらいである だからと言って単独で穴熊を獲りに行くには相当の度胸 と覚悟がいる こんなのを趣味にしていると人間のいざこざなど耳垢ごときに 思えてくるのは私だけでしょうか。 |